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2009-10-26 (Mon)
『私の名前はスージー・サーモン。「サーモン」なんて、魚みたいな名前でしょ?

1973年12月6日。雪が降っていたあの日。私は、14歳だった――。』


主人公の少女スージー・サーモンが学校からの帰り道、近道をするために通ったトウモロコシ畑。そこで待ち受けていたのは悲劇でした。
近所に住む男、ミスター・ハーヴェイに地下室へ誘い込まれ、そこでレイプされ殺されてしまったのです。
愛する娘の死をきっかけに、家族は少しずつ、けれど確実に崩壊していきます。

犯人を追うことだけに人生を費やす父。
娘を守れなかった罪の意識から、家を出て行ってしまう母。
姉の“影”を感じ、自分の存在に不安を募らせる妹と弟。

そのすべてを天国から見守り続けるスージー。
「わたしの死をひきずらないで。
ただ忘れないでほしいだけなの…。」



アリス・シーボルドのデビュー小説である本作は、世界中で愛読され250万部セールスを突破しました。デビュー作としては驚異の数字ではないでしょうか。


凄惨な運命により天国へ昇ったスージーの魂。けれど彼女は死後も家族や友人のそばに寄り添い、その人生を見守り続けます。…スージーを殺した犯人の人生までも。

非常にショッキングな事件から始まるこの物語ですが、語り口はあくまで淡々としていて静かな雰囲気を漂わせています。
そのドライさ加減が逆に切なく、スージーの、残された家族の心の痛みをダイレクトに伝えてきます。


死者であるスージーがたどり着いた「天国」は、望むもの全てが手に入る世界。
けれど、たったひとつ、一番望むものだけは手に入らない…「愛する人々とともに暮らし、成長する」という願いだけは…。

14歳という幼さで人生の幕を閉じられたスージーは、作品の最初から最後までずっと14歳のまま。
作中では最終的に10年もの月日が流れ、両親は老い、妹や弟は大人になっていきますがスージーだけは年齢を重ねることがありません。
それは生者と死者を隔てる大きく絶対的な理(ことわり)。

それは特に、スージーの1歳違いの妹・リンジーの人生を追う場面において大きく読者の胸に響いてきます。
生きていればスージーにも与えられたはずの人生…けれどもう決して与えられることのない人生。
リンジーが成長の過程で得るたくさんの経験を見るにつれ、スージーが失ったものの多さ・大きさを突き付けられるのです。


「人を殺す」という行為の罪は、ただ一人分の人生を奪ったというだけにとどまりません。
殺された人物の周りの人々―家族、恋人、友人―の人生までをも巻き込んで破壊してしまうからです。
ひと一人殺せば、その何倍もの人々までも殺したことになる…。
その罪の重さ。その闇の深さ。

スージーを失ったことで、家族は苦しみ、絶望し、崩壊していきます。
特に父・ジャックの壊れようが、宮部みゆきの『模倣犯』を読んだ時の苦さを思い出させました。
愛する者を奪われ、奪った犯人に罰を与えんとして躍起になる人物。その強すぎる思いに翻弄され彼が走り出した方向は間違っているのに、読者は彼を止めることができない。
悲劇が連鎖していく様をただ見ているしかない。
スージーも、読者も。


崩壊した家族の先に、光はあるのでしょうか。
スージーは、そこで何を得て、何を知り、何を見るのでしょうか。

物語のラスト、「成長することのない死者」スージーが確かに成長したことを知ったとき、「ラブリー・ボーン」という言葉の意味を知ったとき、読者の胸には「何か」が残る、そんな物語です。


因みにこの「ラブリー・ボーン」、二通り翻訳のバージョンがあって、アーティストハウスから発売されている片山奈緒美氏が翻訳したものと、ヴィレッジブックスから発売されているイシイシノブ氏が翻訳したものがあります。
私は両方とも読みましたがそれぞれ長短があるのでどちらがおススメとも言えませんね。
片山氏バージョンはいかにも海外文学を翻訳したものの王道を行くような丁寧でわかりやすい翻訳ですが、ところどころ直訳しすぎで違和感を感じる訳になっていたりします。
イシイ氏バージョンのほうが新しく翻訳されたものですが、言葉使いがより現代的で「アメリカのティーンエイジャー」の雰囲気をよく表現できている反面「え、なんでここをこんな訳し方しちゃうかなー」といった箇所も散見されてたりします。
細かい箇所の違いであって、物語の筋に関わってくるような違いではないので、お手に取りやすいほうを選んでいいと思います。
本当は原書を読むのが一番なんでしょうが…w


そしてこの作品、映画化もされました。
監督は「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン
アメリカでは今年の12月公開、日本では2010年1月公開予定だそうです。
映画についての詳細、その他いろいろはまた別の記事にて。



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