05≪ 2017/06 ≫07
123456789101112131415161718192021222324252627282930
-------- (--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
| スポンサー広告 |
2009-08-28 (Fri)
例えるならば、初夏の森の中。日の光が透き通って、輝くような黄緑色のまだ若い新緑の上に付いた、小さな朝露。


女流作家が描く恋愛小説にありがちな、妙な甘ったるさやねっとりした自己陶酔的な表現が無く、冷んやりしていて、透き通っていて、微かに甘い、そんな小説です。


作者の島本理生さんは、まだ25歳の若い女性です。
この作品は二十歳の時に書いたということですが、文章は安定していて危なげが無く、稚拙さや未熟さを感じさせません。
それでいて、どこか淡々として地味な表現の中に、溢れんばかりのみずみずしさ、若さ故の繊細さを感じさせます。


物語は、堕ちていくだけだとわかっていながら深みにはまってしまった恋の中で、深く傷つき自棄になってしまった主人公が、友人やその家族との交流の中で自らを見つめ直し、緩やかに癒され再生していく様を描いています。

一見ベタで、有りがちな物語のようですが、静かで淡々とした語り口は、まるで清い水が地面に染み込んで行くように心の中にスッと入り込んで、例えば森林の中で思いきり深呼吸をした時のような、或いは美しい月の下で気が済むまで泣いた夜のような、心が浄化されてフッと軽くなる感じを読者に抱かせます。


冒頭で書いたように、この作品、そして作者の島本さんは、まるで木の葉に付いた小さな水滴のような印象を感じさせます。

その存在自体は危うく、すぐに形を変えてしまうけれど…
葉から零れ落ちた雫は小さな水の道を作り、その水の道がいくつも混じわり同化することで成長し、やがて小川から大河へと変わり、最後には海へと注ぎ込む…

そんな成長への期待を感じさせてくれる、素敵な作家さんの作品でした。


(2009.01.03 記)

スポンサーサイト
| *Books* | COM(0) | TB(0) |







管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。