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2010-12-30 (Thu)
「宝塚市の宝塚駅から西宮市の西宮北口駅を経て今津駅までを結ぶ阪急今津線。神戸線との接続駅であり運転系統が分割される西宮北口駅から宝塚駅までは、所要わずか14分のミニ路線である。
この作品はその宝塚-西宮北口間の8つの駅を舞台とし、その乗客が織り成す様々なエピソードを、1往復に当たる全16話で描写する。」(wikipediaより引用)

私が今年読んだ小説の中でベスト・オブ・2010を決めるとしたら迷いなくこの作品を!
これは声を大にして色んな人におススメできます。

阪急電車(電鉄)は大阪梅田と神戸・宝塚・京都を結ぶ大手の私鉄。
私の生活圏からは路線がちょいと離れているので私自身はあまり利用しないのですが、クラシカルな車両と内装、走っている地域がいわゆる「高級地」ということもあって関西では「お上品系鉄道」として認知されています…多分w
宝塚歌劇団の運営元でもありますねー。

物語の舞台は阪急今津線。
駅数はわずか8つ、所要時間も14分というミニ路線。この本が出るまでそんな短い路線があること知りませんでした…w
駅や電車の中で「袖触れ合った」だけの人々がほんの少しずつ関わりあい、影響しあい、物語は進んでいきます。

微笑ましい恋の始まり、それを眺めるのはある闘いを終えて傷ついた美女、彼女に声をかけるのは孫に対しても甘くない凛とした老婦人・・・
言葉を交わすこともあれば遠くから眺めているだけのこともある、けれども誰かの姿が誰かの心に小さい変化を投げかけていく。出会って、別れて。ほんの行きずりのささやかな「縁」(えにし)。

現実ではなかなか同じ電車に乗り合わせただけの人に声をかけて会話するなんてことはありませんが…
だからこそこの作品で描かれる小さな奇跡の連鎖に思わず胸がキュンとなります。

電車に乗り合わせた人たちの数だけ物語があり、電車は毎日沢山の物語を乗せて走っているのですよね。
向かいに座っている耳にイヤホンをつけた不機嫌そうな大学生、実は苦労の末にやっと希望の就職先が決まって本当は今にも笑いだしそうなのかもしれない。
ベビーカーに乗せた赤ちゃんをあやしているニコニコ顔のお母さん、実は口うるさいお姑さんに毎日悩まされて本当は泣きたいのかもしれない。
たくさんの人生、たくさんの物語。


読みながら、登場人物たちと一緒にドキドキしたり、ワクワクしたり、キュンキュンしたり。
読後になんともほんわか優しい気持ちが残る、そんな素敵な作品です。

中谷美紀さん・戸田恵梨香さん主演で映画化もされるそう。(2011年5月公開予定)
是非一度お手にとってみてください(´ω`*)
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2010-05-26 (Wed)
「東城大学医学部付属病院・小児科病棟に勤務する浜田小夜。担当は、眼球に発生する癌―網膜芽腫(レティノブラストーマ)の子供たち。眼球を摘出されてしまう彼らの運命に心を痛めた小夜は、子供たちのメンタルサポートを不定愁訴外来・田口公平に依頼する。その渦中に、患児の父親が殺され、警察庁から派遣された加納警視正は院内捜査を開始する。小児科病棟や救急センターのスタッフ、大量吐血で緊急入院した伝説の歌姫、そこに厚生労働省の変人・白鳥圭輔も加わり、事件は思いもかけない展開を見せていく…。 」

『チーム・バチスタの栄光』に続く田口・白鳥シリーズの第2作目。
今春公開の映画『ジェネラル・ルージュの凱旋』と同じ時間軸で展開される物語です。

うう~ん、この作品だけ見ると、前作の『チーム・バチスタの栄光』に比べて見劣りしてしまいますね…。
物語のどこに重点を置くのかが定まっておらず、あちらへこちらへふらふらしてしまっていて…どうもインパクトに欠けます。
登場人物も、前作では「必要最小限のキャラクターを最適な場所に配置している」と評したのですが、今作では「このキャラ必要か?」というキャラが無駄に出張っていて、まとまりが無い。
前作の桐生先生のような、カリスマ性や求心力のあるキャラクターがいないので(「将軍」速水先生はもとより、「電子猟犬」加納警視正も次作『ジェネラル・ルージュの凱旋』への布石キャラ的な色合いが強いですからね)、物語全体にしまりやメリハリが無くてだらだらした印象になってしまいました。

最後まで一気に読ませるだけの面白さはありますが、犯人の意外性もありませんし(というより、最後まで犯人を隠すなら隠す、犯人をばらすならばらす〈「古畑任三郎」的なストーリー展開〉、はっきりさせたほうが良かったんですよ…どっちつかずの中途半端な進め方をするから不完全燃焼になるんです…)、リアリティにも欠けます。

『チーム・バチスタの栄光』の出来が物凄く良かっただけに、どうしても肩すかしを食ったような気になってしまいますね。
面白くない、とは言いませんけど…パッとしない感じです。

ただ、これはこの作品だけを読んだ時点での感想。
物語がリンクしている『ジェネラル・ルージュの凱旋』を読んだ後で印象が変わるのか、楽しみにしています。


(2009.02.25 記)

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2010-01-11 (Mon)
「17歳のおちかは、実家で起きたある事件をきっかけに、ぴたりと他人に心を閉ざしてしまった。ふさぎ込む日々を、江戸で三島屋という店を構える叔父夫婦のもとに身を寄せ、慣れないながら黙々と働くことでやり過ごしている。そんなある日、叔父・伊兵衛はおちかを呼ぶと、これから訪ねてくるという客の応対を任せて出かけてしまう。おそるおそる客と会ったおちかは、次第にその話に引き込まれていく。いつしか次々に訪れる人々の話は、おちかの心を少しずつ溶かし始めて――。」


「哀切にして不可思議」とは帯のあおり文句ですが、まさしくその通り。
この世で一番不思議なのは、この世に生きる人間とその心なのかも知れません。

わりと「この作品は恐い!」という感想を聞くのですが、個人的にはなんら恐くありませんでした。ホラーとか苦手なんですけどねぇ。
(恐さで言うなら、同じく宮部さんの「あやし」のほうがよっぽど恐かった)
「おそろし」いと言うよりは、切ない、哀しい、苦しいと言った感じです。

たとえば亡者の怨念というのは、それを向けられた当事者にしてみれば大変な恐怖でありますが、それとは関わりのない第三者からすれば悲しいか可笑しいかのどちらかになるでしょう。
人が人を怨む・憎むにはそれなりの理由があり、怨んだ者・怨まれた者の両者を公平に見ることのできる立場にさえ立っていれば、そこに憐憫や嘲笑を抱いたとしても恐怖は感じないものです。(少なくても、私はそうです。)

この作品もそれと同じです。
主人公・おちかを始め、登場人物たちは心のどこかに傷を負い、後悔や罪悪感に囚われているのですが、そのためどうにも感情移入しづらく、客観的な目で物語を眺めることになりました。

そこに浮かびあがってきたもの。私の目に映ったのは、人間の業(ごう)。その哀しさ。

人間というものは皆、生きていく道の途中で度々間違いを犯し、罪を重ねてしまいます。
それは人間として産まれ生きていく以上仕方のないことで、一切の罪を背負わず生きていける人なんてこの世には存在しません。
罪だと知らずに犯した罪、知っていながら犯した罪、後から思い返して「あれは間違いだった」と気付く罪、最後まで気付かないままの罪――。
己の中でのみ完結する罪もあれば、他人を巻き込んでしまった罪もあるでしょう。
そして傷つき、後悔し、己を責めて苦しんだとしても。

また、罪を犯す。
人は、死ぬまで罪を重ね続ける。

それが人間の業。
逃れようのない、哀しい事実。

身を苛むような、そんな大きな罪は、人生で一度あるかないかでしょうが…。
でも、ただ気付いていないだけで、もうとっくに自分は取り返しのつかない間違いを何度もやらかしているのかもしれない。
近いうちに、その間違いは形をもって姿を現すかもしれない。
そして、大きな罪を背負込むことになるのかもしれない。
その可能性は誰の中にも存在しているわけで…。



ひとつひとつのエピソードは面白く、場面描写の巧みさも相変わらずの宮部さんクオリティですが、どうもラストが腑に落ちないと言うか…
疑問や謎や、すっきりしないものが残りました。
これの続編が現在読売新聞の朝刊で連載されている「三島屋変調百物語事続」なわけですが、そこでそのもやもや感が解消されることを願います。


(2009.02.22 記)

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2009-12-20 (Sun)
「私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。吉田神社で、出町柳駅で、百万遍交差点で、銀閣寺で、哲学の道で、「偶然の」出逢いは頻発した。我ながらあからさまに怪しいのである。そんなにあらゆる街角に、俺が立っているはずがない。「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど繰り返す私に、彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。「あ!先輩、奇遇ですねえ!」…「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」。二人を待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった。天然キャラ女子に萌える男子の純情!キュートで奇抜な恋愛小説in京都。 」(「BOOK」データベースより)


作中ではっきり言及されてはいませんが、主人公の「私(先輩)」と「乙女」が通う大学って明らかに京都大学ですよね(笑)。
作者の森見登美彦氏自身が京都大学農学部卒、同大学院農学研究科修士課程修了だそうで。だから「六地蔵」なんてローカルな地名が出てくるんですねー。

独特の文体で綴られる物語。この文体になじめるかなじめないかがまず最初の分かれ道。
次にこれまた独特の世界観になじめるかなじめないかが二つ目の分かれ道。
巷の評判は高いですが、何気に読む人を選ぶ作品だと思います。
私の場合、第一章・第二章あたりで何度か挫折しかけました(苦笑)。
文体もクセが強いんですが、それ以上に世界観に潰されそうで…(なんか疲れてたせいもあるんですけど)
でも文体・世界観ともに慣れてきた第三章・第四章(終章)はするする読めてしまいました。(というか、後半2章と比べて前半2章―特に第一章―が濃すぎるんです。笑)

作品全体の印象は「アニメのセル画みたい」。
一番ベースとなる舞台背景は実写の京都。その上に建築物や乗り物のリアルな絵を重ねて、一番上にアニメ絵の登場人物を重ねる。そんな感じ。
レトロで埃っぽい空気感と、キンキラキンで原色ばりばりの派手さが混じり合っているなんとも変わった雰囲気が漂います。
宮崎駿監督のスタジオジブリ作品「千と千尋の神隠し」に登場した銭湯「油屋」をイメージしていただければわかりやすいかと…。そこに青春時代特有の馬鹿馬鹿しいエネルギーを付加すれば完璧です(笑)。


京都で大学生時代を過ごした方ならドンピシャに楽しめると思います。
特に第三章なんて、他県の方から見れば「ありえね~!!」って感じの団体が多々登場しますが、これは「京大的リアル」です(笑)。
京都って学生の街なので基本的に他府県に比べて大学生の悪ノリレベルが高い気がするんですが(他府県の大学を知らないんで何とも言えませんけど…)、特に京大って「頭のいい変人」がいっぱいいるっていうイメージなんですよねー(スミマセン;)。

かくいう私もほんの1年前までれっきとした京都の大学生でしたから、ありとあらゆる大学時代の思い出が蘇ってきて、ちょっと切なくなりました。
講義をサボって鴨川沿いをブラブラ歩いたことだとか、講義をサボって図書館で本を読みふけったことだとか、講義をサボって四条界隈に繰り出したことだとか……あれ、なんですかその何か言いたげな顔は。
とにかく、そういう大学生特有のなんか自由でのんびりした記憶がわーっと脳内再生されました。


すごくファンタジックで、でもちょこちょこリアルな物語。
好き嫌いは分かれそうですが、「可愛いお話が好き!」な方なら一度目を通してみるのも良いと思います。


(2009.02.08 記)

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2009-12-07 (Mon)
「物語の舞台は、アナザー・ヒル。そこは英国による植民地支配後、日本の文化が移入した歴史をもつ極東の島国V.ファーの聖地で、死者たちが現世に実体ある存在として還ってくるというのだ。そして、死者たちがやって来る「ヒガン」という祝祭の期間、V.ファーの国民は、彼らを『お客さん』として温かく迎えることが風習となっている。
英国と日本の文化や風習が奇妙に混ざり合うV.ファーの国民は、みな「推理好き」で、「ゴシップ好き」。そこに今年は、「切り裂きジャック」ならぬ「血塗れジャック」という連続猟奇殺人事件が世間を賑わせ、誰もが犯人探しに躍起になっていた。
けれども「ヒガン」になれば、犯人が分かる。なぜなら、『お客さん』は嘘をつかない存在なのである。
物語の主人公ジュンイチロウは、東京大学で文化人類学を専攻する大学院生。フィールドワークのため親戚を頼ってアナザー・ヒルにやってきたのだが、そこで彼が出会うのは、不可思議な風習の数々、恐ろしい儀式や天変地異、さらには新たな殺人事件だった――。」


1600ページにわたる超大作。
単行本で上下巻にわかれていますが、2冊重ねると辞書のような厚みです(笑)

まず、本の装丁がとても凝っていて綺麗です。
上下巻並べると表紙が一枚の絵になるのですが、表が昼のアナザー・ヒル、裏が夜のアナザー・ヒルになり、それに気付いた時には思わずため息がこぼれました。
内表紙、内裏表紙にもアナザー・ヒルの絵が描かれていて、読み終わった後「これはあのシーンだな。」なんて思いながら眺めるのも楽しいです。

基本はファンタジーとミステリー。そこに薄気味悪いホラーの空気感がたまに追加されながら物語は進んでいきます。
長編作品ですが途中でダレてしまうこともなく、最後まで一気に読めました。

登場人物が皆魅力的です。
主人公・ジュンイチロウは読者と同化させるため大きな特徴も無い描かれかたをしていますが(いろんな意味で空気な主人公です。笑)、ジュンイチロウの親戚の女性陣(私はハナという大学生の女の子がお気に入り)や、アナザー・ヒル周辺に遊牧する先住民のラインマン(この人が格好いいんだ!!笑)、黒婦人と呼ばれる女性などなど…
最初にある登場人物紹介のページに記載されている名前が多いので覚えられるか心配したんですが、一人ひとり上手にキャラ付けされているので混乱することなくすぐに名前と人物を覚えられました。

物語の進め方は非常に巧みで凄く面白いんですが、最後のオチがなんか…
ページが足りなかったのか?と勘ぐってしまうような、消化不良な終わり方でちょっと不満。
まぁこの作品だけじゃなく、恩田さんの作品ってオチが弱いものが多いですよね。謎めいた終わり方や読者の想像にまかせるような終わり方をする作品でも上手ければそれでかまわないんですけど、恩田さんの場合そのタイプを作風とするにはちょっと力不足な気がします。
(上手い作家さんならそれでも満足できますから。恩田さんの作品ではそういう終わり方をするとなんかモヤっとします。)
9割までは凄く面白かったから、余計残念に感じます。


それでもこの作品の世界観は凄く好きです。
終わり方がアレなことですし(笑)、続編が読みたいです。恩田さん、書いてくれないかなー。


(2009.01.30 記)

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